これからの自治体経営に求められるもの①

自治体の台所事情のこと

自治体の財政というと民間会計用語にはない難しい財政用語が並び、とっつきにくい印象があります。しかも、入りと出の単式簿記での会計で、経営事情がわかりずらいという課題もあり、総務省は、統一的な基準による財務書類という形で、複式簿記の財務データを 1,755 団体(全団体の 98.2%)が平成 29 年度までに整備することを要請した経緯があり、株式会社地域科学研究所のお仕事で産山村の複式会計での財務データの作成も支援させていただいた経緯もあり、そこで見えてきた自治体台所事情のことについて少し触れたいと思います。


「見える負債」と「見えない負債」

自治体の財務データを扱う仕事を通して、分かってきたのが、見える負債と見えない負債に対する経営感覚がこれまで以上に重要になること。自治体の資産量は、ハコモノからインフラまで幅広く、民間よりも資産を保有する地域の中でも大きな不動産所有者でもあります。

この資産は、自治体の負債(借金)を活用し、必要な公共資産整備(「普通建設事業費」と公共施設(学校、庁舎等)の建設やインフラ(道路、橋梁)整備のた めのもので、社会資本(モノ)の蓄積に対しておこなれてきました。

ほとんどの自治体で1970年代から2000年代にかけて学校などをはじめ建設されてきたものばかりで、これから、建築後40年、50年と経過し、一気に老朽化していくフェーズに入っており、新しいものを建築するより、今あるものを更新する計画が重要な視点になります。

ただ、これらは、作った費用(建設費)は、負債で見える化されていますが、できた時点で、目に見えない負債(今からかかる修理や建て替える費用)も同時に発生しているといえます。使っている間は、ジワジワ雨漏り対策や、改修で使えるもので、ひとつひとつは、あまり経営に影響を与えないように思われてしまいますが、行政の資産が同時期に古くなっているということは、その数は右肩上がりで増えていくものであるということは容易に予測できます。これが見えない負債の正体です。

190905講義資料2

先日の西日本新聞で「合併自治体、特例切れ財政危機 大分・杵築は再生団体回避へ緊急策」の記事が掲載されました。これは、杵築市だけが特別であるのではなく、合併した団体は特に、社会インフラも多く、合併の特例がなくなることで収入がなくなり、厳しい財政事情の団体が増えている証拠です。

建てるときには、自治体の借金と国や県の補助で作られた公共施設も、改修や建替えの時は自前の財源で更新しないといけません。(建物を維持管理するお金は、建設した時のお金の約4倍から5倍あるといわれています。)見えない将来のリスク(負債)をどう減らしていくかを考えておくことが、これからの自治体の生き残りには大事な視点なのです。

190905講義資料(和田)福祉にかかる費用は増えて、建物にかけられる費用が間に合っていないのが、今の自治体の財政事情。

財政的背景もさることながら、まさにどの自治体も経営の選択と集中が求められています。さらにこれからの日本の公共空間の使い方、作り方は大変革期を迎えるということについて次回は触れたいと思います。

 

地域科学研究所:西田




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